【医師監修】金縛りとは?原因と解き方、改善する方法をご紹介
突然金縛りになり「心霊現象かもしれない……」と不安を感じたことはありませんか?
実は、金縛りは心霊現象ではなく「睡眠障害」の一種です。
この記事では、金縛りの原因と種類、症状や対策方法を分かりやすく解説します。金縛りが起こりやすい方、悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
目次
■金縛りとは睡眠麻痺のこと
金縛りは心霊現象ではなく、「睡眠麻痺」という睡眠障害(睡眠時随伴症)の一種のことをいいます。
睡眠中は、脳を休ませる「ノンレム睡眠」と、体は休んでいても脳は活発に働いている「レム睡眠」を一晩で何度も繰り返します。
レム睡眠中は体の筋肉の緊張がほぐれているため、力が入らない状態ですが、突然脳だけが目覚めてしまい「睡眠麻痺」が起こることがあります。
体は寝ているのに脳が起きているので、実際に起きているような感覚になり「体が動かせない」と感じてしまい、それが「金縛り」だと思ってしまう原因となります。
このような金縛りは、若い世代の10代で始まることが多く、日本人の約4割弱が「金縛りにあった経験がある」ともいわれています。
・金縛りの主な症状と種類
では、金縛りとは具体的にどんな種類や症状があるのでしょうか?
実際に起こる金縛りの症状には、次のようなものがあります。
- ・意識があるのに体が動かない
- ・息苦しく感じる
- ・耳鳴りがする
- ・声が出ない、出せない
- ・幻覚や幻聴がある
- ・悪夢を見る
上記のような症状はレム睡眠中に起こるため、実際は寝ているにもかかわらず、起きているような感覚になり、しっかりと熟睡できていないまま朝を迎えてしまいます。
そのため、金縛りのあった翌日は疲労感や眠気などが残り、怖さから眠れない日が続くこともあります。
・金縛りが起こる仕組みとメカニズム
金縛りは、睡眠リズムの乱れによって引き起こされます。
一般的に、眠りについたばかりのときは、浅いノンレム睡眠になり、徐々に深い眠りになっていきます。その後、1時間ほど経過すると、再び眠りが浅くなり、レム睡眠に変化します。
しかし、何らかの原因で眠りについてすぐレム睡眠が生じ、睡眠リズムが乱れると、金縛りが引き起こされます。
レム睡眠中は夢を見やすく、それによって幻覚が生じやすくなります。
■金縛りが起こる6つの原因
それでは、なぜ金縛り(睡眠麻痺)が起こるのでしょうか?ここからは、金縛りが起こる原因について、解説します。
原因1.睡眠が不足している
睡眠不足になると、金縛りの状態が起こりやすくなります。
睡眠リズムの乱れによって、体が睡眠バランスをとれない状態になっているためです。
例えば、平日に睡眠不足の日が続き、休日に寝溜めするといった、睡眠リズムが乱れる行動をとると、レム睡眠のタイミングで意識が覚醒しやすくなり、金縛りが起こりやすくなります。
原因2.ストレスが溜まっている
ストレスは、不眠や過眠などの症状を引き起こしやすいため、睡眠バランスを乱す原因になります。
また、精神面(メンタル)が不安定になったときも、睡眠バランスが安定しないため金縛りが起こりやすくなります。
金縛りになった経験が10代に多いのは、思春期に入ると心や体の変化が大きく、精神的に不安定になりやすいためです。
原因3.睡眠の質が悪い
睡眠の質が悪い状態が続くと、金縛りが起こりやすくなります。
特に、ソファでうたた寝したり、数時間寝て起きてという睡眠の分断を続けたりすると、睡眠の質が悪くなり、睡眠麻痺が起きやすくなります。
原因4.疲れが溜まっている
疲労が蓄積されると、金縛りになりやすい傾向があります。
ストレスだけでなく、疲労によっても自律神経が乱されるため、睡眠バランスが乱れます。
特に、多くの仕事を抱えてしまったときなどに、引き起こされやすくなります。
原因5.時差ボケがある
旅行や仕事などで時差のある国に訪問したときなど、睡眠時間の乱れが発生すると、金縛りが起こりやすいです。
海外旅行ではリラックスした睡眠がとりづらく、移動などにより疲労も溜まるため、より金縛りが発生しやすい状況になります。
原因6.仰向けで寝ている
仰向けで寝たときは、金縛りになりやすいとされています。
理由は、ハッキリと解明されていませんが、寝る姿勢の中でも比較的、体の力が抜けやすい体勢だからだと考えられています。
■金縛りを解く方法
実際に金縛りにあったら、どのように対処すればいいのでしょうか?
ここでは、金縛りにあったときに解く方法について解説します。
・無理に体を動かさずにリラックスする
金縛りになったときは、焦って体を無理に動かさないようにしましょう。
まず深呼吸をして呼吸を整えてから、ゆっくり体の一部を動かしてください。
体の一部をゆっくり動かすことにより、その行動を脳が察知して金縛りが解けます。
心霊現象かもしれないと思うことで、夢を現実と勘違いして幻覚を見てしまうので、怖い想像をしないように注意しましょう。
・症状がひどいときは病院へ
リラックスして症状を改善しようと試みたり、生活リズムを見直したりしても、症状が改善できないときは、何かしらの病気が関係している可能性もあります。
そのようなときは無理して我慢せず、睡眠外来や精神科を受診して専門家に相談することをおすすめします。
■金縛りを予防・改善する6つの方法
金縛りにあうと寝ることに不安を感じてしまい、睡眠不足につながります。
ここでは、できるだけ金縛りにあわないために、金縛りを予防・改善する方法について紹介します。
1.就寝前にスマートフォンやテレビを見過ぎない
就寝前に、スマートフォンやテレビを見過ぎないようにしましょう。
スマートフォンのブルーライトの明るさにより、視細胞が刺激され体内時計に影響が出ます。
そのため、夜なのに昼だと脳が勘違いを起こし、睡眠を促すホルモンが分泌されないので眠れない原因となります。
テレビも、寝る直前まで見るのは控えましょう。
2.ストレスを溜めないようにする
ストレスは、人を眠れなくさせる原因のひとつです。
ひとりでリラックスできる時間を増やしたり、ウォーキングをして少し汗を流したりなど、さまざまな方法に取り組んでみましょう。
「これをすれば自分の心は穏やかでいられる」という方法が分かっていると、ストレスに負けにくくなります。
3.十分な睡眠時間を確保する
十分な睡眠をとることで、睡眠障害を克服できます。
基本的には、7~8時間程度の睡眠時間が望ましいとされています。
寝る時間が遅くなってしまったときは、就寝前にシャワーではなくお風呂にしっかりつかることや、カフェイン・アルコールを控えるのもおすすめです。
また、室温調整やベッドの配置場所など、睡眠環境自体を整えることも大切なので、寝室の環境の見直しも行いましょう。
4.寝返りをしやすい環境をつくる
金縛りを避けるために、睡眠環境を見直す方法もあります。
例えば、掛け布団や毛布が重すぎると、体が押さえつけられてしまい、寝返りをうちにくくなります。
マットレスも同様で、特に柔らかすぎるマットレスでは、体が沈みすぎてしまい寝返りを妨げてしまうのです。
そのため、普段使っている寝具の買い替えを検討することも、予防・改善をする方法といえます。
また、就寝時にはパジャマにもこだわり、寝返りしやすい快適なものを着用することをおすすめします。
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5.ソファなどで寝落ちしない
仕事から帰ってきて、そのままソファに座り、寝落ちするのは避けましょう。
ソファでうたた寝をしてしまうと、眠気を引き起こす「睡眠圧」を手放すことになり、改めて寝ようとしたときに眠れなくなるためです。
活動している間に高まっていた睡眠圧が、うたた寝により途中で切れてしまうことで、睡眠の質が下がり、寝なくてはいけない時間に眠れなくなります。
結果、金縛りにあう可能性も高くなってしまうので、うたた寝には注意しましょう。
6.自分にあったパジャマで睡眠の質を向上する
リラックスした寝心地を手に入れるために、パジャマを見直すこともおすすめです。
自宅で着ているTシャツやスウェットで寝ている方もいるかもしれませんが、できれば就寝時にはパジャマに着替えるようにしましょう。
パジャマは寝るときのことを考えて作られているため、睡眠の質がより高くなります。
質の良い睡眠をとるためには、パジャマの選び方にもこだわりましょう。
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■質の良い睡眠で金縛りを予防しよう
金縛りは心霊現象ではなく、睡眠障害の一種のため、睡眠の質が悪くなると起こりやすくなります。
睡眠の質を改善するには、生活リズムを見直すことが第一ですが、ストレスを溜め込まないようにすることも大切です。
また良質な睡眠をとれるように、寝室環境や就寝時のパジャマも快適なものにするなど、睡眠環境を整え、金縛りを予防しましょう。
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【この記事の監修者】
医師:木村 眞樹子(きむら まきこ)
日本睡眠学会専門医・総合内科専門医・循環器内科専門医・ビジョントレーニング指導者1級資格を保有。
都内大学病院、KDDIビルクリニックで循環器内科および内科として在勤中。内科・循環器科での診察、治療に取り組む一方、産業医として企業の健康経営にも携わっている。
※この記事は、正しい情報発信を行うために、医師に監修を依頼しております。商品について医師が推薦を行うものではありません