2024.01.19

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【医師監修】おりものが原因で陰部がかゆい。病院に行くべき基準は?

女性の身体を守るために出る「おりもの」。
 
しかし、「おりものがいつもと違う」「陰部のかゆみが気になる」というとき、病院に行くべきか迷ったという経験はないでしょうか?
 
そこでこの記事では、おりものの変調や陰部のかゆみの原因、そして病院に行くべき基準について詳しく解説します。
 
また、おりもので汚れた下着の洗濯方法もあわせて紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
 
 
 

■おりものが原因で陰部がかゆいのはなぜ?

おりものが原因で陰部がかゆいのはなぜ?
おりものとは、子宮頚部や子宮内膜、腟から出る分泌物のことです。
 
おりものには、腟内の潤いを保ったり細菌が体内に入るのを防いだりといった大切な役割があります。
 
正常なおりものは、無色または透明に近い乳白色であり無臭ですが、腟内に異常が起こると色などに変調をきたしたり、腟や陰部にかゆみが出たりします。
 
かゆみの原因には、菌が増殖したことによる腟炎や皮膚のかぶれなどがあるため、次項で詳しく見ていきましょう。

●原因1.カンジダ腟炎によるもの

カンジダ腟炎は、女性の75%が生涯で1回は経験するといわれる腟炎の一つです。
腟の中の常在菌である「カンジダ」という真菌(しんきん)が増殖して起こります。
 
通常であれば、腟内は乳酸菌などの常在菌によって酸性に保たれているため、カンジダが増殖しにくい環境です。
 
しかし、以下のような場合にカンジダ菌が増殖しやすくなります。
 
・抗生物質の服用により常在菌のバランスが崩れたとき
・妊娠や出産などでホルモンバランスが崩れたとき
・疲労やストレス、風邪などで免疫力が低下したとき
・蒸れ、汗などで高温多湿な環境のとき
 
これらが原因でカンジダ菌が増殖すると、腟や陰部にとても強いかゆみや痛みを引き起こします。
 
また、カンジダ腟炎を発症すると、おりものに以下の傾向が見られます。
 
おりものの状態 白色、ぽろぽろとしている(酒粕やカッテージチーズ、おから、ヨーグルトのような状態)
おりものの量 多い
おりもののニオイ なし、または弱い
 
カンジダ腟炎は、身体の少しの変調でも発症しやすく、再発しやすい病気のため「おりものがおかしい」「陰部のかゆみがひどい」という場合は、早めに受診するようにしてください。

●原因2.細菌性腟症によるもの

細菌性腟症は、大腸菌やブドウ球菌、溶連菌などの不特定多数の細菌が増殖して起こる腟感染症です。
 
免疫力の低下や、頻繁な腟洗浄などにより、腟内の正常な常在菌のバランスが崩れることで発症しやすくなります。
 
細菌性腟炎は性病ではありませんが、性行為が原因で発生することがある感染症です。
 
細菌性腟症が発症すると、魚の生臭さのような独特のニオイのあるおりものが発生するほか、陰部に軽いかゆみや赤みが出る場合もあります。
 
また、おりものには以下の傾向が見られます。
 
おりものの状態
淡黄色または緑、灰色がかっている、水っぽい、粘着性がある
おりものの量
中程度、または多い
おりもののニオイ
強い
 
細菌性腟症は、放置していると子宮内膜炎や卵管炎、骨盤腹膜炎などほかの病気を発症する可能性もあるため、おりものから悪臭がしている場合やかゆみがある場合は、早めに病院を受診しましょう。
 
 

■病院に行くべきかどうかの判断基準

病院に行くべきかどうかの判断基準
ここでは、どのような症状があるときに病院に行くべきか、その目安について解説します。

●おりものが普段とは違うとき

おりものの色や量、ニオイには個人差があります。
 
前述のとおり、無色または透明に近い乳白色で無臭なのが一般的ですが、腟内の乳酸菌の働きにより、かすかに甘酸っぱいニオイがすることもあります。
 
また、おりものは正常であれば卵白程度の粘度があり、乾くと薄黄色に変色します。
 
しかし、以下のような状態が続いているときは、注意が必要です。
 
・下着を何度も変える必要があるほどおりものの量が多い
・おりものの色が灰色、緑色、黄色、茶色など変調がある
・おりものがカッテージチーズ状に固まっている
・おりものに悪臭がする
・おりものが泡立っている
 
このような変調がある場合は、早めに婦人科を受診しましょう。

●かゆみが我慢できないとき

陰部のかゆみは、生理中のナプキンによる蒸れや摩擦などで発生する場合がありますが、すぐに治るケースが多いです。
 
しかし、普段とはあきらかに違う強烈なかゆみや熱っぽさ、痛みをともなうかゆみがある場合は、細菌やウイルスなどに感染して腟炎(カンジダ腟炎など)や外陰炎を起こしている可能性があります。
 
かゆみが長く続く場合や、かゆみが強烈な場合は、早めに婦人科を受診しましょう。

●性感染症が心配なとき

女性に多い性感染症には、クラミジア感染症、淋病、トリコモナスなどがあります。
これらの性感染症になった場合も、おりものの量や色が変化したり、腟や陰部にかゆみが出たりすることがあります。
 
もし性感染症が心配な場合は病院を受診し、検査を受けるようにしましょう。
 
多くの性感染症は比較的簡単に治せますが、治療が遅れると重症化するケースや、不妊の原因になる場合もあります。
 
性感染症は症状が出ないケースも多いため、心配な方は性感染症の検査をおすすめします。
 
 

■「カンジダ腟炎かもしれない」と思ったら

「カンジダ腟炎かもしれない」と思ったら  
繰り返しになりますが、カンジダ腟炎は女性の75%が生涯で1回は経験するといわれる病気です。
 
腟や陰部に強いかゆみがあることが多く、ニオイはあまりありません。
 
ほかに、「おりものの量が多い」「おりものが酒粕やカッテージチーズ状、ヨーグルト状になっている」などの特徴もあるため、かゆみやおりものの変調を感じたら、早めに病院を受診しましょう。

●カンジダ腟炎だった場合の治療について

カンジダ腟炎の治療は、抗真菌薬で行います。
 
抗真菌薬が配合された腟錠や軟膏が処方されるので、腟錠は腟に挿入し、軟膏は患部に塗布します。
 
また、陰部のかゆみが強い場合には、ステロイドが配合された軟膏が処方されることもあります。
 
なお、カンジダ腟炎は性交渉でパートナーにも感染する可能性があるため、パートナーにもかゆみなどの症状があるときは、ともに受診することも検討してみてください。

●カンジダ腟炎は市販薬で対処してもよい?

「カンジダ腟炎かもしれない」と思っても市販薬は使わず、まずは病院を受診してください。
 
なぜなら、ほかの疾患である可能性もあるからです。
 
また、カンジダ腟炎は再発しやすい疾患のため、再発したと思われるときは、市販薬を使用して様子を見てもいいでしょう。
 
しかし、市販薬を使用しても症状が治らない場合は、再度病院を受診することをおすすめします。
 
 

■おりものは健康のバロメーター!ニオイや状態をこまめにチェック

おりものは健康のバロメーター!ニオイや状態をこまめにチェック  
おりものは、普段からチェックしておくことで、健康のバロメーターになります。
 
体調や女性ホルモンの変化(特に月経周期)によっても変化するものですが、「普段のおりものとあきらかに違う」と感じた場合は、何らかの疾病にかかっている可能性があります。

●【洗濯も重要】おりものが多い日などは下着をこまめに変える

おりものは生理と同じように周期があり、女性ホルモンの影響を受けて、量が多い日や少ない日があります。
 
特におりものが多い日は、下着をそのまま着用していると、かぶれてかゆくなる原因になってしまいます。
 
また、時間が経てば経つほどおりものは洗濯で落ちにくくなるので、下着をはきかえて、こまめに洗濯することをおすすめします。
 
もし、下着の取りかえが難しいときや、紙製のおりものシートが苦手な方は、次項で紹介するチェリッシュムーンで対策してみてください。
 
縫い目が無いから薄くてすっきり。洗って使えるおりものシートです。シート部分は、漏れにくい吸水保水素材や、撥水ラミネートしたマチを使った6層構造で漏れの不安を軽減。さらに、肌に触れる部分は抗菌・防臭加工を施しています。
 
 

■おりものの汚れが取れない、落ちない場合の洗濯方法

腟の分泌物などにタンパク質が混ざったおりもの汚れは、放置すると酸化して黄ばんでしまい、落ちにくくなります。
 
ここからは、おりものの汚れを落とす方法について見ていきましょう。

●そのまま洗濯せず、まずはつけ置きをする

おりもの汚れを落とすときは、洗濯する前につけ置き洗いをします。
 
つけ置き洗いとは、洗剤を溶かした水やぬるま湯につけることで、染み込んだ汚れを落とす方法です。
 
洗い桶などに水やぬるま湯を用意して適量の洗剤を溶かし、そこに下着を10分から60分程度浸します。その後、普段通りに洗濯機を回すか、手洗いをすれば洗濯は完了です。
 
おりもの汚れで下着が黄ばんだりシミになっていたりする場合は、酸素系漂白剤を使うのもおすすめです。

●セスキ水スプレーを使うのもおすすめ

セスキ水は、セスキ炭酸ソーダを水に溶かしたものです。
 
セスキ炭酸ソーダは、弱アルカリ性の粉末状で「セスキ炭酸ナトリウム」とも呼ばれ、水に溶けやすく重曹よりも洗浄力が強いという特徴があります。
 
自宅にセスキ炭酸ソーダがある場合は、水500mlに対しセスキ炭酸ソーダ5g(小さじ1)を溶かしてスプレーボトルに入れ、汚れに吹き付けてみてください。
 
その後、少し時間を置いたあとで洗濯します。

●おりもの汚れ専用の下着用洗剤なら洗濯が楽

洗濯用洗剤には、経血やおりもの汚れ専用の商品も市販されています。
 
専用の洗剤を使うことで下着へのダメージを防ぎながら、タンパク質汚れを落とすことができます。
 
ほとんどの商品は、専用洗剤を汚れている部分に馴染ませ、そのまま洗濯機で洗うだけという場合が多いため、手間もそれほどかかりません。
 
 

■おりものと陰部のかゆみに関するよくある質問

最後に、おりものや陰部のかゆみに関するよくある質問を紹介します。

●下着によるかぶれやかゆみを防ぐ方法は?

陰部のかぶれやかゆみが気になる場合は、締めつけや縫い目のない下着、または通気性のよい素材の下着を選ぶようにしましょう。
 
特に、生理周期によっておりものが多くなる時期は、可能であれば予備の下着を用意しておき、気になったときに下着をはきかえるのもおすすめです。
 
また、ぴたっとしたボトムスやガードル、そしてタイツやストッキングなど下着が蒸れやすい服装には注意が必要です。
 
ストッキングを着用したい場合は、太もも丈のものを選び、通気性を保てるようにしましょう。

●下着についたおりものが固まるのはなぜ?

タンパク質汚れは、熱湯で洗うとかえって汚れが固まってしまいます。一方、水では汚れが落としにくいため、ぬるま湯を使うのが一番です。
 
前述したつけ置き洗いをすると、おりもの汚れが落としやすくなります。

●かゆみがある場合、おりものシートは使わないほうがよい?

かゆみが出た場合は使用を中止して、かゆみの原因がおりものシートの刺激によるものなのか様子を見てください。
 
また、紙製のおりものシートと相性が悪いようであれば、布製のおりものシートを検討してみてください。
 
おりものの量が多いときは、下着を定期的に変えるという方法もありますが、「出先で下着を交換できない」という場合には、布製のおりものシートを補助的に使うのも一つの手です。
 
 

■おりものの変調やかゆみがある場合は病院で相談してみよう

おりものは、女性の健康のバロメーターとなるものです。そのため、おりものの量や色、ニオイにあきらかな変調を感じたら、早めに病院を受診しましょう。
 
ただし、陰部は生理中のナプキンの使用などによって、一時的にかゆみが出ることもあります。
 
蒸れや摩擦などによるかゆみは、下着の締めつけや素材、通気性に注意することで対策ができます。
 
おりものの状態を普段からチェックし、快適な毎日を過ごせるよう意識していきましょう。
 
【この記事の監修者】
医師・島袋 朋乃(しまぶくろ ともの)
医師・島袋 朋乃(しまぶくろ ともの)
日本産科婦人科学会専門医・日本医師会認定産業医・日本産科婦人科内視鏡学会・日本生殖医学会所属。
平成28年旭川医科大学医学部を卒業後、函館五稜郭病院、釧路赤十字病院などでの勤務を経て、総合病院やクリニックで産科・婦人科・生殖医療に携わっている。
※この記事は、正しい情報発信を行うために、医師に監修を依頼しております。商品について医師が推薦を行うものではありません
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